総意とは
『天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。 』
日本国憲法の条文は、上記から始まります。
つまり日本国憲法では、まず最初に日本という国の国柄をあらわしているのですね。
日本には天皇が存在していて、その由来は日本国民の総意によるもの・・・。
これが、日本の特徴であると世界に発信し、国民にも示しているわけです。
さて、ここでいう「総意」とは、どういうことなんでしょうか ?
今も天皇制を反対している国民が一割近くいるようですから、国民の全員が天皇の存在に賛成しているわけでもなさそうです。
しかし、各種のアンケートをみると、戦争直後では 90%の人が、また代が代って 今上陛下即位 20年記念の ときも 85%の人が天皇制を支持しているといいます。
そういうことで、大多数の日本人が天皇制を支持しているということで、日本国憲法の冒頭の条文はほぼ間違いないもの・・・だと思います。
しかし、アンケートによっては、現代の日本人のほとんどが日常生活においては天皇制には無関心であるという結果もあります。
天皇制を支持をしているか否かと問われれば支持していると答えるものの、日ごろから積極的に支持しているわけでもない・・・というところでしょう。
そうしてみると、天皇は日本の国旗「日の丸」みたいです。
日の丸も、同じ日本の「象徴」であり、一般の家庭では祝日などに掲げます。
しかし、毎日 玄関に日章旗を掲げている家なんて、小生は見たことがありません。
ところが、異民族が集まっている「合衆国」では、日常的に玄関などに国旗が掲げられ、学校の各教室には地球儀とともに星条旗が置かれています。
この現象を逆にいえば、合衆国国民は、日ごろから国家を意識しているのに対して、日本人は特段に国家を意識しなくてもよい環境にあるということですね。
つまり、日本人は国家の統一に対しては、それを意識しないほど安心し切っているということでしょう。
しかし、振り返ってみれば、日本でも戦前、戦中は毎日のように国旗が振られていました。
ということは、日教組がいうように、国旗は戦争を示す印なんでしょうか ?
そんなことはありません。
小生が住んでいる市役所や公民館、体育館では、毎日国旗が掲揚されています。
でも、戦争はしていませんね。
いずれにしても、日本という国は、日ごろから国を意識していなくても住める国ということで、それだけ日本という国は、完成度が高い、統一・統合された独立国家ということになると思います。
国家統一のために国民が努力しなくても良いほどに、成熟した国が日本ということでしょう。
その国の象徴が天皇ということで、圧倒的多数の国民の「総意」に基づいて成立しているということは、これは凄いことだと思います。
ところで、日本最古の歴史書でもある『古事記』にも、日本が総意に基づいて建国された様子が記されています。
つまり、皇祖である天照大神が、国が乱れ統一されていない状況を見て、それは自分の徳の足りないせいだと考え「反省の間」に閉じこもってしまわれた。
ところが、我々庶民の祖先神である八百万の神々が、全員総出で天照大神を説得し、彼女の再登場に成功させたという古事があります。
そして、八百万の神の要請に応えて、「今後、日本という国は、私の子孫が治めるものとする。」と宣言したのでした。
普通の国なら、そんな宣言をすれば、たちどころに倒されてしまいます。
しかし、日本の場合は、「総意」に基づいて建国したのですから、それに反対するものがなく、万世一系に代々の天皇が国の中心にいたのです。
また、日本が世界大戦で敗れた時も、普通ならその元首は滅びるのですが、天皇を支持する多くの国民が、マッカーサーに血書を送付して、天皇制の存続を訴えた結果、昭和天皇は退位することもなく全うされました。
これも、ある意味、国民の「総意」によるものと言えるでしょう。
他にそんな国があるでしょうか ?
このように天皇の地位は、日本の建国以来、国民の総意に基づいたものであることが分かりましたが、その天皇の相続のあり方についても、現在では国民の「総意」が必要であるようです。
日本の歴史を辿ってみますと、国民に主権がなかった時代では、権力を持っていた人が、天皇の相続について関与していたようです。
しかし、現在では主権は国民に移っていて、その国民主権である日本では、天皇の相続についても日本国憲法が以下のように示しています。(第一章 第二条)
「皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範 の定めるところにより、これを継承する。」
そして、その皇室典範の第一章 第一条には、「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」 と記され、これもまた、多くの日本人が賛同しているといいます。
これもまた国民の「総意」による皇統の相続の形態といってよいものでしよう。
しかし、この「男系男子」という皇位継承の条件が、生物学的に難しいものであることが最近になって分かってきて、それが現実的な問題となっているのですね。
そこで現在では、その「総意」を覆さないと、天皇家は近い将来 消滅してしまうと危惧されているのです。
ところが「男系男子」という相続のあり方が、天皇制の根幹であり、天皇制そのものであるという意見が日本国内では非常に強いのです。
確かに『皇統譜』を見ると、紆余曲折があったものの、血統筋はそうなっていました。
そこで、皇統の男系男子の相続を支持する人たちの間では、「男系男子でなければ天皇ではない ! ! 」と言い切ってしまっています。
これは、天皇制を強く支持する人ほど、特に熟年男性にその傾向が現れていると思います。
最近では、「ネットウヨ」と呼ばれる人が「男系男子の相続」に拘りを見せているようです。
一方、近世に至って女性の公民権が認められるようになり、戦後、女性が選挙権を持ったのですが、その女性の人たちが 皇統の「男系男子」の相続についてどう思っているのか・・・ ?
男性ほど「男系の相続」に対して拘りがない・・・と思いきや、皇室に限って男系男子の相続を支持する女性が多いようです。
これも興味深い一面ですね。
それについては他にもアンケート結果がありますが、様々で一定していません。
つまり、アンケートのとり方では、どのような結果にもなるということなんでしようか ?
ところで、「総意」について、一言添えておきたいと思います。
それは、独裁国家、独裁体制における国民の「総意」です。
その場合も、高い支持率が見られます。
たとえば、北の将軍様を選ぶ選挙では、100%の北朝鮮の国民が、現在の将軍様を支持していることになっています。
そんなに、北の将軍様はすばらしい人なんでしょうか ?
こうした、武力を背景にした「総意」は、日本国憲法で記されている「総意」とは、根本的に意味が違うことには間違いないでしょう。
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