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離見の見

風姿花伝

能の大家、世阿弥が記したとされる『風姿花伝』
能の奥義書ということですが、600年前の内容とは思えない新鮮さを感じます。

昨夜の NHK教育テレビ番組 『100分de名著』 では、この書の文中に記されている「離見の見」 (リケンノケン) を説明していました。
その内容を簡単に記すと・・・。。。。

明治大学教授で能の評論家でもある 土屋惠一郎氏によれば、「離見の見」とは、単に「客観的に自分を見つめる」という意味だけでなく、臨機応変に仕事をすることのようです。

つまり、最近人気がある カウンセリング の 『メタ認知』よりも、一歩踏み出た考え方みたいですね。

世阿弥は『風姿花伝』で、以下のように記しているようです。

観客が大勢集まり、客席がなかなか静かにならないことがある。
そういう時には、観客のざわめきが静まるのを待ち、わざと役者の登場を引き延ばす。
やがて観客が待ちかねて、気持ちがまとまり、今か今かと楽屋を見る。
ちょうどその時、ここぞという瞬間をとらえて、声を発すれば、そのまま会場も魅了されて、全員の気持ちがひとつになる。
こうなれば、もう舞台は成功したものと同然である。

時節感当、つまりグッドタイミングで舞台に登場すれば、その舞台は成功するということのようです。
つまり、舞台に「出る」のではなく「当っていく」。そうすれば、そのエンターテイメントは大当たりになるということです。

このように、当たって砕けるのではなくて、タイミングを自分に合わせていく、タイミングを自分に引き寄せる。

なにか、ゴルフのコーチの言葉みたいですね。
これは、エンターテイメントのみならず、スポーツでも、仕事・商売でも、教育・家庭の子育てにも、更にいえば、夫婦関係にも当てはまる至言だと思います。

「今でしょう ! ! 」と思う、そのタイミングを計る能力。
その能力が、仕事を成功させるには必要ということのようです。

ところが、そのタイミングがなかなか計れないときはどうするか・・・

世阿弥は『花境』という伝書に

軽々と機を持ちて・・・

という言葉を残しています。

これは、「そのときの雰囲気に合わせよ」という意味なんだそうです。
つまり、自分が出るタイミングを待つのではなくて、そのときの場の空気を読み、その流れに乗ってしまえということのようです。
そのために、順番を変えたり、演目そのものを変更してしまうことも可ということのようです。

つまり、逆に言えば、自分だけのタイミングやリズムでやってはならないということですね。

これは、タレントのタモリさんがよく言う言葉です。

臨機応変さ・・・

これができるか出来ないかが、その仕事の成功の鍵になるというのですね。

臨機応変に仕事ができるか ?

そうした仕事をするためには「離見の見」という境地、つまり、観客席から見た自分の姿を意識することにより、本当の自分の姿を見極めることができるかどうかですね。
あるいは「目前心後」、つまり、目は前を見ているが、心は後方にあって自分を客観的に見つめているということでしょう。

自分勝手な思い込みを、世阿弥は強く禁じていたのですね。

この「離見の見」

これは「意識」するものではなく「感覚」的な後ろからの「目」だと、土屋惠一郎氏は言います。
そういう境地を会得するまで、絶えず稽古を重ねるということでしょう。

600年前から伝わっている人生の奥儀、秘伝を記した世阿弥は、改めてスゴイ人だったと思いました。

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