八兵衛
「八兵衛」といえば、水戸黄門でお馴染みの「うっかり八兵衛」を思い浮かべる人が多いかもしれませんね。
あるいは チェーン店にもなっている「焼き鳥の八兵衛」とか「蕎麦の八兵衛」とか・・・
どうやら飲食店の屋号に、この「八兵衛」が使われていることが多いみたいです。
ところで、小生が住んでいる静岡県の志太地域では「八兵衛信仰」というのがあります。
志太地区の古老たちは親しみを込めて「八兵衛さん」と呼んでいるようです。
一般には、江戸時代の元禄の頃、この志太地域で疫病が流行し、通りがかりの「八兵衛」という僧侶が、持っていた薬でその疫病をおさえたというのが通説になっているようです。
その「八兵衛」さんは、地蔵として、あるいは石碑となって地域に馴染んでいます。
いったい、この「八兵衛」さんとは、どんな人なんでしょうか。
ある地域では、「医者」として、またある地域では「商人」とされています。
そこで、地元の フリーペーパー 「むるぶ」 平成 25年 10月 25日号 では、この「八兵衛」さんの「正体」についての諸説を紹介していました。
それを少し引用してみましょう。
① 六部僧説
諸国巡礼をし、全国 66ヶ所有名な寺に法華経写経を奉納する行脚僧であった。
② 修験者説
当地に来たときに疫病が蔓延し、加持・祈祷をしてこの疫病を治めた。六部僧説を含め「弘法大師」の再来と称された。
③ 小長谷八兵衛説
紀伊国 ( 和歌山県日高郡川中島 ) の出身の 吉田八兵衛のこと。若い頃から漢方医学を説き、遍路姿になって諸国を廻り病人を救った。旧大井川町の小長谷家に婿養子となり、漢方医として地域の住民を救った。
④ 中島八兵衛説
三重県尾鷲の回船問屋、土井八郎兵衛の娘と結婚した中島八兵衛という説。船から下りて陸路で通りかかった時、持っていた薬で地域の人々を助けたという。
⑤ 人柱・川除け説
ときどき氾濫する大井川の、堤防普請の際に八兵衛が人柱となった。その後、志太地域を流れる川の堤防やその周辺に「八兵衛」さんが祀られるようになった。これは川除けのご利益のため。
⑥ 行き倒れ説
「八兵衛」というひとが、この地域で行き倒れになった。行き倒れ人は「祟り神」になるとされていたので、それを祀れば逆にご利益があるとして祀られた。
以上が、「むるぶ」紙の記事を記した小嶋良之氏の解説です。
小生は、「八兵衛」さんは、お坊さんだった・・・説が有力だと思います。
その理由は、志太地区の仏教の歴史から察することが出来るからです。
そこで、志太地区の年表や地図を開いてみると・・・
まず、大井川の扇状地としての志太地区から富士山を望む際、その手前に、花沢山という小高い山が見えます。
そこに、奈良時代の天平年間 ( 729~748年 ) に、行基が法華寺 (天台宗) を建立したそうです。
その後、弘仁 6年 ( 815年 ) 、その花沢山の海隣の当目山の麓に、弘法大師が香集院 ( 真言宗のち曹洞宗 ) を建立したとされています。
その香集院は、別名 虚空蔵山とも呼ばれ、本尊の虚空蔵菩薩は聖徳太子の作とされています。
そこで、当時の大井川は、志太の浦とも呼ばれるように、河口が幾筋にも広がっていて、小湊がたくさんあったようで、その数に応じて船着場も多かったようです。
当時の東海道は、岡側には山賊が活躍していて通行が危険だったため、海側の道が利用されていたようです。
ところがこの大井川。たびたび氾濫していて、貞観年間 (859~876年) に大氾濫 (一説には大津波 ) に襲われて、地形が変化して船着場が利用できなくなったそうです。
そうなると、岡側を通らなければならないのですが、そこには山賊が・・・。
そこで、僧侶たちが山賊たちに仏教を広めて、その地域の通行の安全を期したのです。
こうして、川が氾濫すると、京や奈良の各派の高僧たちが布教活動に赴いて来たのです。
ところが、この駿河の地域は歴史的にも戦争の多いところだったので人々の生活は貧しく、川が氾濫すると原住民たちは飢えをしのぐために山賊にならざるを得なかったようです。
どうやら大井川の氾濫は、飢饉や疫病の原因になったようです。
そういうわけで、年表を見ると、大井川が氾濫するたびに、僧侶や修験者たちが志太地区にやってくる傾向があったようです。
こうしてみると、この人たちは、今で言う「災害ボランティア」みたいな側面を持っていたのかもしれませんね。
もちろん、弘法大師もそのひとりで、「八兵衛」さんについても、弘法大師の再来と喜ばれたわけです。
まぁ、地方にとっては 弘法大師 自体が もはや「都市伝説」ですから、「八兵衛」さんも「都市伝説」かもしれませんね。
以上が、小生の想像です。
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