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父の遺品 -3

QCサークル

今まで記してきたように、亡父は「品質管理」を ライフワーク としてきました。
そして、それを当時としては最新のフロッピー・ディスクにデータ化して残していました。
それを見ると、父は「QCサークル」の普及に心血を注いでいたようでした。

当初、QCサークル とは、主に製造現場における構成員の、セルフ・コントロールを話し合う場として発足したようです。
つまり、品質を高めるためにどうすればよいのか、自主的に話し合い、実践することを目的としたサークルでした。

父は、構成員の自主性を重んじる考え方でしたから、経営者とか管理職とは離れた環境を作ろうと苦心したようです。

そのために、父は独自に猛勉強したようです。
とにかく、当時の現場の雰囲気は、ルネサンス以前の奴隷的な暗黒時代の雰囲気が残っているような感じでしたから、QCサークルが楽しいものにするために、落語を研究したり、文章 で説明するよりも 図表 で説明したほうが分りやすいということで、イラストレタリングの勉強もしていたようです。
さらに、経営者との理解を深めるためにも、人間学を勉強しようと、有名な宗教団体や、倫理道徳 を教える教化団体の講義にも耳を傾けていたようです。
そうして、楽しく、人間味のあふれた雰囲気を作るためにはどうしたらよいのか、試行錯誤を繰り返していた様子が伺えます。

(一社員であった父は、「経営学」つまり今で言う MBA みたいなものを勉強しようとする気持ちはなかったようです。)

また、高価な日本文学全集とか世界文学全集なども購入し、実際に全部 読んだようです。

さらに、英会話が必要ということで、当時、出たばかりの重たい携帯テープレコーダーを持ち歩いて、NHK の ラジオ英語講座 などを録音して聞いていました。

そういうわけで、父の収入のほとんどは、父の勉強費用に当てられ、小生ら子供には 必要なものさえ買ってもらえませんでした。

ところが、品質管理 も、全社的な「TQC」の時代になると、それぞれの持ち場に経営要素が取り入れられ、セルフコントロール から マネジメント という考え方に移行してきました。
そうなると、自主性よりも統括性が重視され、社員は 品質管理に管理される という オカシナ状況になりました。
つまり、作業の 一挙手一投足 まで「規格化標準化」されるという事態に陥ってしまったのです。

そうして、1990年代になると、マネジメントシステム化され、父の目指した「QCサークル」とは違った方向に進んでしまったようでした。

たとえば、作業の標準化の目的も、「難しい仕事を、誰にでも出来る簡単な仕事に標準化する」ためのものになってしまいました。
しかし、父の目指した標準化は、それとは全く違った 「高いポテンシャルを保つための規格化」 のようでした。

そうして父の意向は、世間から全く受け入れられなくなり、品質管理 から ISO の時代になると、さらに社員の自主性は失われ、ファミレス用語 にも象徴されるような マニュアル世界が出現してしまったわけです。

こうして、マネジメント至上主義時代が到来することになりました。
そうして「価格破壊」「カンバン」「アウトソース」がキーワードになった頃には、父は幸運にも、現場から離れ、この世にはいませんでした。

晩年の父は、突然、品質管理から離れて、宗教活動に没頭しようとしました。その直後に、重度な脳梗塞に襲われました。

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コメント

あらま様 大変だったでしょう
お父上が苦労されたことはそれとして、父親というものは同時代では理解できないと思うのです
私も親父とはけんかばかりでした
しかし還暦になりますと、親父の気持ちがわかるようになりました

投稿: 佐為 | 2010年2月 5日 (金) 18時34分

佐為さま、ありがとうございます。
父と小生との関係は、決して良いものとは言えなかったと思います。
常に、仕事人間の父に、反発していました。
しかし、父の遺品を処理していると、子供なりに父の歩んできた道がわかるような気がしました。
とにかく父は昔の人間そのものでしたから、頑固で怖くて勝手な印象しか残っていません。
でも、だんだんと年齢を重ねるごとに分ってくることがあるのかもしれませんね。

投稿: あらま | 2010年2月 5日 (金) 19時41分

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